五節 忠誠と野心51


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「見事だな……セシル……」
「ベイガン」
その賛辞は再会時の虚偽な言葉とは違う、真意に満ちていた。
もはや、その口調は途切れ途切れであり、もう長くはない事を無意識に悟らされる。
「思えば……私が忠誠をゴルベーザ様に誓ったのは……貴様を倒したかったのだ。いつも貴様やカインが
いるせいで……私は日陰の存在になったのだ!」
「そんな事は!」
「ないと言えるのか! 貴様が!」
その言葉に声がつまった。
「王の寵愛を受けていたのは貴様だ……例え、貴様の地位が実力であったとしても、貴様のせいで。
犠牲になったものはいなくなないんだ!」
「…………」
「王のお前にかけた情熱は並々ならぬものだったたろうな!」
ベイガンの言葉はまだ続く。
「それにカインとて、貴様の陰に隠れた存在だっただろう……」
「何!」
その言葉は今まで、放たれたベイガンのどの言葉よりも衝撃があった。
ならばカインもベイガンと同じく……
「気づかなかったのか……奴も俺に似た存在さ」
「しかし、あいつは……カインは操られているだけだ! 決してお前のように……」
考えたくない可能性を煽るようなベイガンの言葉をセシルは否定する。
しかし、心の何処かでその可能性
「もしかすると、望んでそうなったのかもしれないぞ、あいつは! まあ、俺ほど道を外しちゃあ
いないとは思うがな……」
その自分への戒めの言葉の後、ベイガンは高らかに笑う。

「そんな! 決して! 決してそんな事は……」
「そう思うか! ならばそれが正しいのかもしれんな。俺だってあいつの事を全て知っているわけではないし、
付き合いはお前の方が長いのだ! だが、あいつが今ゴルベーザの手の中にいる」
「僕は……カインを助けなければ……」
自然とそういう言葉が出た。
「あいつが、聞くかな? お前とあいつにある者は案外、深いのではないか?」
「とにかく、カインと会わなければ……あいつと話がもう一度したい……しなければ……」
「ならば……早く俺にとどめをさせ……まずは王に会うんだな……」
そう言ったベイガンに対し、セシルは無言で剣を向ける。
「勿論、そのつもりさ……」
このまま放っておいてもベイガンの命は尽きるだろう。だが、自らの剣で止めを刺さねばならない。
半ば、強迫観念に近いものがその時のセシルにはあった。
「そうさ……それでいいんだ……」
「ベイガン、他に……ゴルベーザ達の事を何か知ってるか?」
「さあな、俺はただ、王からこの力を授けられただけ……それ以外は何も知らん」
「そうか」
それだけ言うと、セシルは剣を、再びベイガンの腹部へと突き刺さすとする。
「豹変した王やゴルベーザ様への忠誠等どうでも良かったのかもしれん。ただ自分の欲望、
野心の為に……その方が都合が良かったからだな……」
直前に呟いたその言葉に返答はしなかった。
その言葉の終わりを確認すると、セシルは剣を深々と突いた。剣が肉を抉り、引き裂く音が聞こえる。
だが、ベイガンからは悲鳴一つも漏れなかった。
剣を抜くと、もはやベイガンは微動だすらもしなかった。
後にはただ、血に濡れた剣を持つ、セシルが立ち尽くすだけであった。
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