変わる世界 交錯する言葉31


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ゾットの塔最上階。その中の最深部に属するこの場所に彼女は縛られていた。
<ご苦労だったな下がって良いぞ>
ゴルベーザ労いの言葉を受けたバルバリシアは、少し様子を見てくると言ってその場所へと赴いた。
「元気かい……?」
たった数分振りの再開、それにこのような状況に於いてはひどく場違いな声掛けだ。
「バルバリシアといったかしら?」
彼女に返答する声はバルバリシアと瓜二つであった。
「ああそうだ……よく覚えてくれてたねローザ」
最初彼女と話した時は驚いた。初見の印象で彼女は自分にそっくりなのであった。
魔物と人間という相容れぬ存在であるのだが顔の印象はそっくりであるのだ……双子のような瓜二つ
とまではいかなくとも、初見ならば見違えてしまうかもしれない。
それに声色――これは外見以上に聞き間違えてしまう程に似ていた。
「私を殺すつもりなの?」
「不満かい……?」
自分に似たローザに親近感を感じてか、彼女にしては珍しく穏やかな口調で返す。
彼女を見す見す見殺しにしてしまう事。それはバルバリシアにしても本意ではなかった。
だが、彼女にとって命令違反を犯してまでのリスクを伴ってさえ、彼女を助けようとする気はない。
二律背反の矛盾した気持ちだが折角彼女と話す機会が訪れたのだ、吉とでようが凶とでようが彼女の
事は静観しようが恨むようなことはしないだろう。
「誰だって嫌だわこんな所に縛り付けられて死を待つだけなんてね……」
上空に備え付けられた巨大で鋭利な<それ>を見て物憂げそうな表情で話すローザは予想外にも恐怖は感じている
ようには見えなかった。
「でもまあ……偉く気丈に振舞ってるじゃないかい?」
バルバリシアも人間と呼ばれる者と話す機会はこれまでに全く無かった訳ではなかった。
だが死を身近に感じた人間は例外無く、失望や絶望に暮れ、世界の全てを恨むかのような表情を見せていた。
<お前一人がどんな憎しみを見せようが世界は変わらないのに……無駄な行動だ>
そういう想いを抱きつつ、バルバリシアは幾つもの末路を静観してきたのだ。
脆弱で小さな者達、哀れみ苦しみ、何処に届くこともない恨み節を残して息絶えるのが自分にとっての人間のセオリー
であった。
「まだ死ねないわ……」
「へえ言うねぇ、そんな御身分なのに?」
その自信はどこから来るのだ? 所詮はただの空虚な強がりなのか? 何故恐怖しない? 様々な意味を込めた疑問だ。
「やらなければならないことがあるのよ――セシルにもカインにもまだ何も言っていないのよ」
「…………!」
自分が聞きたい方向に話は核心へと近付きつつあるようだ。バルバリシア思わず息を呑んだ。
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