穿つ流星12


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「気にするな――何もかも私自身で決めて行ったことなのだ。結果がどうであろうと他人である誰かが文句をいう事
も咎める事も出来ぬ」
「長老は――あなたの無事を祈っていたのに……?」
「ふ……心配症なあやつらしい」
この場に及んで、テラの言葉は穏やかであった
「だが……人の今生は自分で決めるもの。始まりが誰かに授けられたものとしても、終わりは自分で幕を下ろすもの……」
「…………」
「これも憎しみに捉われて戦った報いかもしれん。私も奴も本質的には同じであった。似たような者がぶつかったとしても力を
擦り減らすだけなのかもしれん。だが、どんな結果であろうとも私はやることをやった。満足感はあるし後悔する気もおこらん。
正直、アンナの敵を取れなかったのは本当は悔しい……後はお前達に託すしかないようだ」
「そんな事をいうな!」
シドが言った。
「しっかりしろ、すぐにローザを助けだして、飛空挺に連れて行ってやるぞ! バロンに帰ってゆっくり養生すれば――」
「無駄だよ」
どこまでもお見通しのようだ。
「自分の体の事は自分が一番良く分かる。人生が終わる時――それに他の誰が干渉することもできん」
テラがゆっくりと目を閉じる。
「何だと! おいっ目を開けろ!」
今度は怒ったような口調で言う。
「起きろ! 起きるのじゃ! くそじじい」
いつもの罵倒を被せる。テラの命を少しでも引き留めようとするシドなりのやり方なのであろう。
声が枯れてしまうのではないかと思う程の必死の罵声は寂しく響き渡るだけであった……
終始無言で事を見届けていたヤンが黙祷するかのように静かに目を閉じた。
程無くしてテラの体は静かになった。それどころか枯れ木のように衰弱しきった体は次第に微々たる光の粒となりゆっくりと
拡散していった。
肉体を魔力に変え力を使い果たした賢者に待っているのはただの死では無かった。自らの肉体すらも消してしまう完全な意味
での消滅であった。
穏やかな散り際であった。
しばらくの間、誰も何も言わなかった。
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