穿つ流星21


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「…………」
ローザから凝視されてもカインは顔を落として無言を貫いていた。
「どうして……?」
ローザからこぼれる疑問の声。
無理もない。先ほどまでのゴルベーザの意に沿って動いていた自分の様子は彼女も充分に見ていたはずだ。
「安心して……もうカインは大丈夫だよ。ゴルベーザに操られていただけなんだ……」
「そう……良かった」
カインが無言を貫き通している間にもセシルによって自分の行いが弁護されていく。
それに対してローザも安堵したような言葉を上げる
(俺は……)
しかし、セシルやローザが納得しても自分の気持ちの整理はなかなかつかなかった。
先程セシルやシド達の前では操られていた自分に対しての悔しさを吐き出して、自分の行いに対して詫びる事も出来た。
しかし、彼女――ローザを前にしては、カインは何か言葉を出すことに躊躇いがあった。
自分がゴルベーザへと付け入られた最たる理由は間違いなく彼女に対する気持ちである。
結局、自分のしてきた事はなんだったのだ? ローザに対して何がしたかったのだ……?
考える毎に自分が情けなくなっていく。自分が利用されていた事実に対する悔しさとは違った気持ち……恥ずかしさがカイン
の心を支配していた。
「すまない……ローザ」
ようやく言葉にできたのはその一言であった。
「許してくれ」
本心で言ってるのかと聞かれると、はっきりと肯定できないだろう。口から出る謝罪の言葉はある意味で、自分自身を卑下する為である。
こうやって自分を落とすような言葉でも言わなければカインは今の自分を維持できなかった。
「それに操られてたばかりではない……俺は……俺は……!」
更に言葉が出てくる。
俺は――何だというのだ?
この先からは唯、ありふれた単純な言葉を捻り出す事は出来ない。自分の本心に基づいた言葉でなければいけないであろう。
「俺は……君に側にいてほしかった……」
それは好意による言葉なのか。昔からの付き合いによるものなのか。そしてセシルへの優越感を感じていたから出た言葉なのか。
はたまたそれを全て内包した言葉なのか、自分でも完全に考えが纏まるまでも無く出た言葉であった。しかしこれは本心なのだ。
悔しみと恥ずしめを受けて出た本当の言葉。今はこれ以上、何かを言うことはカインには無理であった。
「カイン……」
ローザの言葉はそれだけで途切れた。何度目になるのか分からない沈黙が辺りを支配する。
再びカインも顔を俯かせて黙りこくってしまう。
許してもらえる訳がない。最初からそう思っていた。今の誰も何も言わない状況も当然ながら予想の範疇なのだ。
彼女と彼――ローザとセシルの前から消え失せるべきなのか……そのような思考が頭によぎる。
「カイン」
苦悩交じりのカインを呼ぶ声はローザのものではなかった。セシルである。
「こちらを見て」
今度はローザの声だ。
促されるままにカインは視線を上へと戻す。そこには先程までと変わらない二人がいた。
しかし、二人はそれぞれがカインの目の前へと手を差し伸べてくる。
「!」
二人の意図がすぐには読めなかったカインは、疑問を言葉に出すことは出来なかった。かろうじて出た一声が、疑問符の役割を果たしたの
であろう、すぐさま二人からの返答は返ってきた。
「誰が一番誰を大切に思っているかなんて自分にしか分からない。だからこそ誰かを理解しなければならないんだ」
それがセシルの真意なのか……?
「一緒に戦いましょう……カイン」
ローザの言葉はセシルよりも分かりやすかった。
それはつまり?
否――今は深く考える時期ではない。仮にそうだとしてもじっくり言葉を吟味している時間は無いだろう。
「すまん……ローザ……セシル……!」
少しでも間をおくと離れてしまうのではないかと感じさせる二人の手をカインは躊躇う事無く握った。
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