罪の在処9

牙は瞬く間にローザとカインの体にも突き刺さる。
その後の二人の様子はヤンと全く同じであった。牙が深々と突き刺さった体からは全く血がでていない。だがそれにも関らず、二人は
何かに苦しんだかのような呻きを上げる。
「黒竜の牙――闇の力を集約したそれは相手を気づ付ける事なく内部からその体を蝕んでいく」
ただ茫然とその様子を眺めるしかないセシルに対して、ゴルベーザが切り出した。
「直接的な傷はない。だがじわじわと体へと侵食した闇はゆっくりと相手を苦しめる。そして訪れるのは――」
「ふざけるな!」
言われなくても分った。だからセシルはその先の言葉を遮った。ゴルベーザにその先を言わせたくはなかった。
「どうすればいい?」
この状況を打破せねば三人は間違いなく助からない。だからといって何かいい方法が見つかるわけでもない。
セシルはゴルベーザを威嚇する意味も込めてそう尋ねた。
「なあに簡単だ」
教えてもらえるとは到底思っていなかったので驚いた。
「体に突き刺さる黒の牙を抜き取ればすぐにでも闇の侵食は止まる。送り出す根本である牙さえなくなれば闇の力はその力を急速に
弱める」
そして不敵な口調で最後にこう付け加える。
「最も出来ればの話だがな、出来ればの。くく……」
何故ここまで丁寧に話すのかがセシルにはやっとわかった。
体から黒の牙を抜けば三人は助かる。だがそれは同時に誰かの助けが必要だという事である。そして今この場にいるのはセシルと
ゴルベーザだけである。そして今セシルは呪縛の冷気で動くことは出来ない。
「仲間が打ち果てていくのをそこでゆっくりと見届けるがいい」
解答を先回りして答えられた。
要はそういうことだ。誰も三人を助ける事が出来ない。今のセシルには黙って様子を見届ける事しかできない。
絶体絶命の状況が訪れた。

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最終更新:2009年11月19日 02:04
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