去りゆくもの 残されるもの9


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「逃げるだと……」
追いかけてからどれくらいたったのだろうか。いつの間にか塔のもっと上層まで来ていたらしい。
辺りの様子はいつの間にか迷路のような場所から、中央に空洞を備え、周りに足場を備えたような場所へと変化していた。
中央から下の階が覗きこめるが、何階層も同じような構成が続いてるようで、空洞部分の底を見ることはできない。
その場所でルゲイエはようやく立ち止まり、セシル達の方へと振り返った。
「違うね~今この場所で君たちと戦うのは無意味なだけですよ」
「負け惜しみを!」
「そう思いたいのなら勝手に思っておきなさい、真なる勝利の為に一時の敗北を喫すのはなんら恥じるべきものではありませんからね」
「ぐっ……こいつ……」
ひょうひょうとした態度を崩す様子がないルゲイエに苛立ちを隠せないヤンであったが、謎めく言動の連続に今度は不気味さを感じていた。
「さてと、もうあなた達と話す事はありませんね。そしてこの体にも――」
ルゲイエの視線はセシル達を向いてはいなかった。狂気に満ちた眼は階層の中央部分から見渡すことのできる遥か眼下の闇を見ていた。
「何をする……?」
ゆっくりと闇へと近付くルゲイエにセシルが言葉をかける。
「まさか、飛び降りるつもりか?」
今の状況からしてそう考えるしかなかった。今が塔の何階層かは分からない。だがかなり高いところまで来てるのは確かだ。
その場所から飛び下りれば無事ではすまないだろう。
何故? 咄嗟に疑問を浮かべるがわからない。否、例え彼の口から直接聞きただしても分からないだろう。
「待て巨大砲は何処だ?」
理由を聞くことも、その行為を止める事も出来ないまま見守るしかないと思ったところでヤンが口を挟む。
「我々はこの塔に設置された巨大砲を止めに来た。あれもお前が開発したものなのだろ? ならば言えっ! どこにある」
無視されるものと思ったが、その言葉聞いたルゲイエはぴたっと足を止めて懐から何かを取り出した。
「あれならばもう少し階層を登ったところにある……」
取り出したものは鍵束であった。ルゲイエは振り返る事はせず背を向けたままにそれをセシル達へと放り投げた。
「その鍵を使えば巨大砲の制御室には辿りつけますよ……あとは好きにしなさい。あんなもの作った時点で興味はなくなりましたからね」
「待って――」
用は済んだとばかりに再び歩き出したルゲイエに今度はローザが口を開く。
しかし、その声は消え入るほどに小さいものであり、続くルゲイエの声にかき消されてしまった。
「もう発射の準備は殆ど終わっていますからね~急がないととんでもないことになりますよ~くくくくーーー」
言い終わらぬうちにルゲイエはその体を跳躍しその身を空中へと委ねる。
あっという間にその体は重力に引かれ遥か奈落の底へと姿を消していった。

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