去りゆくもの 残されるもの17


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「きましたか」
集合場所とされた地点――バブイルの塔に設置された飛空挺発着場には既に迎えと思わしきドワーフの兵士達
が何人も待っていた。
「こちらにも聞こえてきました。巨大砲の破壊、お見事でした。して――」
セシル達の存在に気づくと若きドワーフの民が威勢よく話しかけてきた。
どうやら爆発の轟音で巨大砲の破壊を確信したようだ。ドワーフの民にとっての嬉しい報告に士気は万全といった感じだ。
最も彼らはセシル達を迎え城の方へと帰還させる輸送部隊であり、実際に戦う訳ではないのだが。
「クリスタルの方は?」
若い兵士は更なる吉報の預言し、催促してきた。
セシル達に期待しているのだろう。
「それが……まだ……」
目をぎらぎらと輝かせる兵士の期待を無下にするのは申し訳ない気分であったが、事実は事実だ。
それにあんな事があったのだ……包み隠さず全て話しておきたかった。
「そうですか……」
セシル達の反応が良くないものと知り若者はがっくりと肩を落とした。予想通りの反応ではあるが
やはり居たたまれない気持ちになる。
「そうがっかりするな! 」
暗く沈黙する会話へと割り込む怒声が一つ。
「シド隊長!」
「シド」
セシルとその若者がその名を呼んだのはほぼ同時であった。
「隊長……?」
「あ、はいっ。シド技師長は今ドワーフの飛行部隊の隊長の立場も兼任しています……」
「そうなのか」
いつの間にかシドも頑張っていたようだ。否、彼がいたからこうして地底の大地を自由に動き回れるし、ゴルベーザの
飛行部隊にも対抗できたのだ。いくら感謝しても足りないくらいであろう。
「巨大砲を破壊出来ただけでも充分な成果だ! よく頑張った!!」
そう言ってセシルの肩をぽんぽんと叩いて祝福してくれた。
「うん……ありがとう」
素直に喜んでいいものだろうか。
結果的にヤンを犠牲にしてしまった。それを皆に話せば辛い思いをさせてしまう。
そんな気持ちがあった。
同時にもう一つ、シドはセシルに対しいつも労いの言葉をかけてくれた。
セシルが子供の頃、飛空挺について教えてくれた時、お世辞にもあまりよく理解できずにシドの出した質問にも上手く答えられない
時があった。
その時もシドはセシルに対して、頑張った時と同じ様に労いの言葉をかけてくれた。
要はあまりいい成果や結果がだせなかった場合でもシドはセシルに対してよく頑張ったと労いの言葉をかけてくれるのだ。
当然、その言葉を貰った中には自分で納得する結果を出せた時もあったのだが。
だから今の台詞もいつも通り結果は問わずに、とりあえず頑張った事を褒めてくれただけなのではないかと思ってしまったのだ。
無論それが煩わしいと感じたことは一度もない。セシルを育ててくれた王は国や民を思う心はあったが厳格な人物であった。
それは育て子のセシルに対しても例外ではなく、中途半端な頑張りで褒めてくれたことは無かった。
セシル自身も王の性格は充分に承知していたし、その事に対して特別な憤りや憎しみを感じたことはない。
むしろより一層自分を磨いてやろうと思った程であった。
しかし、今思えばそのような厳しい王の姿勢を素直に受け止めれたのはシドのようないつも満面の笑顔で褒めたたえてくれる者がいたからであろう。
シドがいなければ心では分かっていても体は王を拒絶したかもしれない。

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