月へ7


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祈り塔の最上階には数えきれないほどの人が集まっていた。
おそらくは街中の、ひょっとしたらミシディア外からもしれない多くの人物がここに集っていた。
その中にいる誰しもが賑わいもせずに黙り込み、じっくりと祈りをささげている。
魔導士の街の中でも群を抜いた高さである塔からは街全体を見渡せるだけでなく、街の先にある入り江やその先に広がる無限とも
思える海原ものぞくことができる。
バロンへの帰国際にセシルが無事に流れついたのもあの辺りだろうか?
少し苦い思い出と共にじっくりと観察をしているとふとある事に気づく。丁度セシルが漂着したその入り江は二つの部分が突出している。
それはまるで大きく開かれた口のようである。
「竜の口より生まれしもの――」
ふとあの伝説の事がよぎった。セシルは思わずその言葉を口走ってしまった。勿論、回りの人の祈りの集中を見ださぬような小声でだ。
「良く分かっているようだな」
長老がセシルと同じく小声で呟く。そして歩きだし祈りを続ける者達の先頭へと出る。
「皆の者! 祈るのじゃ!  伝説が真の光となる時は、今において他に無い!」
鼓舞するかのような声を上げ長老は再び祈りを始める。
「私達も……」
小さく、だがはっきりとした意志で述べたのはリディアだ。じっくりと瞳を閉じて静かに祈りを始める。
ローザもそれに続く。エッジも普段からは想像できないような様子で大人しく祈っていた。
当然ながらセシルも祈る。その心の中には今祈りの塔にいる誰もが抱える気持ちとは別の者が芽生え始めていた。
(この懐かしい気持ちは――)
言葉にして表現出来たのはそれが最低限であった。
何故なのだろう? セシルは時々今の状況と似たような気持ちにつつまれる時があった。
試練の山の頂上であの声を聞いてパラディンになったあの日もそうであった。
「竜の口より生れしもの……」
自然とあふれる言葉は今のセシル達の希望ちなっている伝説――
何度も詠唱した事もないのに何故か一文字も間違えることなく口から出てくる。
「天高く舞い上がり……」
祈りの塔の眼下、海原がうねりを上げる。

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