月へ8


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海の底から姿を現したそれはかつての船旅で遭遇した幻獣神リヴァイアサンを越える大きさであろうか。
それはやがて海を離陸し、その巨体を大空へと浮かべ上げる。
一見して巨大な鯨とでも形容できるそれはリヴァイアサンとは違い、完全に無機質で生物的なものからかけ離れていた。
疲れることなく空中停滞する非現実的な光景がより一層機械的であり、落ち着いて観察すれば飛空艇を大きくした天翔ける船に
見えてきた。
「あれこそ正しく……大いなる呟きの船……魔導船!」
巨大な箱舟を一同はただ黙って見続けるしかなかったが、最初に口を開いたのは長老であった。
「あれが……」
沈黙は破られ皆から声が上がる。
やがてそれは疑問や不安から感嘆へと変わった。
「ついにやったぞ……」
感動を口にする者、隣の者と喜びを分かち合う者と様々だ。
ローザやリディア、エッジからも笑顔が宿る。
「闇と光をかかげ眠りの地に更なる約束を持たらさん……」
緊張の解けとた空間でセシルは誰にも聞こえない言葉で伝説の続きを呟いた。
闇と光とは――自分の手のひらをまじまじ眺めながら考える。
もしそうだとしたら眠りの地とは――おそらくは――
今だに浮かぶ魔導船よりも遥か高くの空を見上げる。夕刻に近づきつつある今の時間では
その姿を確認する事は出来ない。
「長老」
皆と同じく感傷に浸る長老にセシルが話しかける。
「僕達は今から月へと向かいます」
「月じゃと!」
「ええ」
驚きの声の長老に対して、はっきりと述べるセシル。
「でも、どうやって?」
二人の会話を聞いていたリディアが疑問を割り込ませてくる。
「あれは……あの魔導船という船なら可能なはずだ」
「確かに聞いたことがある」
長老もセシルの言葉で何かを思い出したようだ。
「この街、ミシディアの記録によれば月よりこの地へと来訪した船があると――」
驚きはしなかった。
やはりあの言い伝えはセシルの解釈通りであっていたのだ。
「ローザ、リディア、エッジ。ついてきてくれるか」
「勿論だぜ!」
悪びれる様子もなくエッジが言う、二人も似たような意志だ。
「では行こう!」
月へと向かうセシルには一つの言葉が渦巻いていた。
約束。
伝説の中の言葉。そしてそれと似た言葉をあの声からも聞いた。
(あの声はひょっとしたら――)
だがすぐにでも頭の隅にその考えを押しこめる。
今考えなくても、それはすぐにでも判るであろう。全ては月という大地が教えてくれるであろうから――

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