背中が痛い。
何か尖ったものが右腕に当たっている気がする。
そう思い、何度か腕を動かすが、そのたびに尖った石のようなものに当たる。
どうやっても体のどこかに痛みが付きまとい、仕方なくティナは眼を開けようとした。
「ん?気がついたのか」
すぐ傍からの声に驚いて、一気に眼が覚める。
暗い。
体を起こすと、ティナは岩の上に横たわっている自分に気付いた。痛いはずだ。
まだ夜らしく、傍にはランプが置かれている。
「大丈夫か?」
覗き込んでくる男は、ジュンと名乗った老人ではなく、若い男だった。先ほど追いかけてきた男達とは違うようだ。身につけているものが違う。殺気も悪意も感じない。逃げ切れたのだろうか。
(私…、助かったの…?)
男は、息をついたティナを見て笑顔になる。
「モーグリ達に感謝だな。あいつらが助けてくれたようなもんだよ。あんた、ティナだよな?」
「…ええ、でも、…名前以外の、ほかの事を、よく、思い出せないの…前の事も、自分のことも…」
正直、名前すら自信がなく、途切れ途切れに伝えると、男が怪訝な顔をした。
「…記憶がないのか?」
潜めた声で訊かれ、静かに頷く。
「でも、時間が経てば思い出すって…」
男はティナの顔を眼を凝らすようにして見詰めた。
最終更新:2007年12月12日 00:08