「!」
突然のチョコボの登場に、ティナは膝立ちのまま絶句している。見たことがないらしい。
満月色の毛並みをした大きめのチョコボは、ポピュラーな革の鞍をつけているが、誰も騎乗していない。
どうやら、今から城へ戻るところのようだ。という事は、ラッキーな事に無料だな。ロックはにやりと笑う。
「ティナ、乗ろうか」
「えっ」
「これ、乗り物なんだよ。ほら」
ロックが手を伸ばすと、すぐにチョコボは首を地面に寄せる。黒い目はティナをじっと見ている。
ティナは恐る恐るチョコボの首を撫でた。
「良かった、人のいいチョコボが立ち止まってくれて。これですぐにフィガロだ」
まだ緊張の解けないティナの体をチョコボに乗せ、チョコボを嚇さないように慎重に、ロックも騎乗した。ティナの体を後ろから抱きこみながら、チョコボの背を叩く。
それを合図に、チョコボは強靭な脚力を満喫するかのごとく、足場の悪さをものともせずに駆け出した。
「わっ…」
ティナがチョコボの首にしがみつく。
「割と安定してるな、このチョコボ」
「嘘、怖いよ!」
「そうかなぁ」
初チョコボはティナにとっては大変な刺激だったらしく、少しリズムが狂うたびに「わっ」「きゃあっ」と悲鳴を上げたが、少しすると「しがみつき過ぎたら余計揺れるのね」と学習し、ようやく景色を眺める余裕が生まれてきた。とはいえ、一面、黄金の砂漠でしかなかったが。
「ロック、あれ…!」
「うん、あれだ。」
砂漠の国、フィガロ。
その中枢を担うフィガロ城が見えてきた。
最終更新:2007年12月12日 00:12