私の力を、知っているのに?
ティナは、明確に言葉にはしなかったが、エドガーが意を汲んだように微笑んだ。
そう、ジュンもロックも、追ってきた男たちも、目の前のエドガーも。みんな、ティナの魔導の力を知って、何らかのかかわりを持ってきている。
それは、リターナーだとか、帝国だとか、一国の主だとか。本当に、さまざまな人間が関与している。この、魔導の力を求めて。
魔導の力は、いったいあなたたちに、何を与えるの?
どうして私を追うの?
ロックにも訊かなかった事を、どうしてかティナはエドガーにぶつけた。
「どうして?」
やれやれ、という風に、エドガーが1度、深く目を閉じる。
「まず」
まず?
「君の美しさが心を捕らえたからさ。第二に君の好きなタイプが気に掛かる・・・魔導の力のことはその次かな。」
「…?」
エドガーがティナの反応を待っているのを感じ、瞬きをする。
何を言ったの?
「え?」
「いや。」
エドガーが顎に手をやる。
「鈍ったかな。」
低く短い呟きが聞こえたが、よく分からなかった。
「なんていったの?鈍い?」
エドガーがティナの直截さに、思わず吹き出す。
「え?なに?」
「口説いたんだよ、さっきのは」
口説く?
ティナが黙ったままなので、エドガーはたまらずに声を上げて笑った。
「ああ、私にこんな無粋な事を言わせるなんて、流石だね」
ゆっくりしておいで、と言い残して、笑みを口の端に残したまま、エドガーは重たげにマントを翻し、部屋を抜けていった。
最終更新:2007年12月12日 00:15