「な、何だ?! ウェッジ、おい!! どこへ消えた!?」
――よせ。なんの冗談だ!?
彼にとってそれは初めて味わう恐怖だった。戦場に転がっている死の恐怖、そんな
ものには慣れていたはずだった。しかし、今感じているのはそれとは別のものだ。
――もしかすると我々は、とんでもない過ちを……。
「あっ、か、かっからだが……」
なにも知らなぬまま、思考もろとも光に飲み込まれていった。この世界を去る前、
ビックスの思った真実を誰も知ることはない。
残された少女は誘われるようにして氷づけの幻獣へ向けて歩を進める。拒むように
何度も光を放つが、この少女には通じなかった。
通じないどころか、同調するように力が増幅される。行き場を失った魔導エネルギーは
洞窟の岩肌を這うように拡散し、やがて両者の間に戻る。それを繰り返しながら蓄積された
エネルギーを抱えきれなくなった炭鉱内の空気は飽和し、解放を求めて火花を散らす。
薄暗い洞窟内が真っ赤な閃光に包まれる中で“少女”は意識と、兵器としての存在を失った。
***
Under the command of Empire
The strategy failed.
なお、この任務における炭鉱都市ナルシェからの帰還者は、ゼロ。
帝国軍司令部の最終報告書には、それだけが記されたという。
-FF6オープニング<終>-
最終更新:2007年12月12日 01:17