ff6 - 25 figaro


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頭上に広がるのは濃すぎる程の青色、雲一つなく晴れ上がった紺に近い青空の中央で、
煌々と輝いている太陽。
 眼下に広がるのは、うねるような起伏と美しい風紋を持った熱砂の海――人の侵入を拒む
でもなく、だが歓迎していると言うには厳しすぎるこの大地に人々がつけた名は、フィガロ砂漠。
 吹き抜ける風が生み出す波紋が、砂の芸術を生み出す。そんな砂漠の中で小さくため息を
吐き出した者が居た。
「ふゥ~。ガストラさまの命令とは言え……」
 砂漠を渡るという割にはローブなどを羽織っただけの軽装で、顔面に施された必要以上の
厚化粧は、さながら道化師だ。彼は帝国の兵士2人を従えてフィガロ城を目指していた。旅の
一座と言うにはいささか不穏な出で立ちと顔ぶれである。
 それもそのはずで、「ガストラ」と言えば今や世界で知らぬ者はいない。圧倒的な軍事力で
世界を支配しようと目論む、ガストラ帝国皇帝その人である。
 そうなれば、彼らの正体が旅の一座でないことは明かだ。
 途中、小高い砂丘の上で立ち止まると、およそ好意的ではない感想をフィガロ砂漠に向けて
吐き出した。
「まったくエドガーめ! こんな場所にチンケな城を建てやがって。偵察に派遣された私の
身にもなってみやがれ!」
 道化師のような化粧を施してはいるが、彼は旅芸人ではなく魔導士だった。先のナルシェ侵攻
作戦、その報告を受けて彼はここへ遣わされたというわけだ。偵察に自分を指名した君主殿を
恨むべきだと思うのだが、そこは権力構造の魔術だ。
 ついでに言うと、フィガロ城を建造したのはエドガーではない。八つ当たりも甚だしい独り言で
ある。後ろで控えていた兵士のひとりは、そのとばっちりが来ない事を密かに、だが必死に祈った。
「ほれ、クツの砂!」
 しかしその祈りもむなしく、被害は後ろに控える2人の兵士にも及んだ。熱せられた砂の上に跪き、
差し出された方の靴の砂を払うと、また後方に下がる。
「ハッ! きれいになりました!」
 直立不動の姿勢でもって、いま命じられた任務の達成を報告する。どんなに些細な事であっても、
これは帝国軍における掟だ。帝国軍兵である以上、その掟に背くわけにはいかない。
 その姿を見届けると、旅芸人風の男は満足そうに高笑いをあげた。
 後ろに控える兵士達は表情を変えることなくその背中を見つめていた。へたに機嫌を損ねて
不当な扱いを受けるよりも、そっとしておくのが得策だと言う事を知っているからだ。
 旅芸人風の男はひとしきり笑うと、急におとなしくなった。
「つまらん」
 おそろしく冷静な声で短く言い捨てると、また黙々と歩き始める。
 上官に恵まれなかったうえに、フィガロ砂漠へ偵察に派遣された運の悪い兵士2人は、前を歩く
その男に狂気と恐怖を感じながらも、黙って後についてフィガロ城を目指すのだった。
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