一節 新たなる旅立ち11


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「ギルバート……王子……?」
「うん、そうだよ。知らなかった?」
一部始終を見ていたリディアは、隣で硬直したビッグスの呟きを質問と受け取った。ずいぶん仲が良さそうで、セシルのことまで知っていたのに、何で驚くのかいまいち腑に落ちないが。
オバサンたちが出てきたところで追いついて、どうも邪魔してはいけなさそうだったので、ギルバートの用が済むまで大人しく待っていた。ぶじ仲直りしたようなので、遠慮せず声をかける。
「ギルバート! おいてくなんてひどいよ!」
「リディア?
 ……ごめん、忘れてた!」
「なにそれ~~!!」
口では悪いと言いながら、ギルバートの目は笑いっぱなしで、反省した様子がない。オバサンたちまで、なぜかくすくす笑っている。目のはしに、ちょっと涙を浮かべながら。
「あやまるから許しておくれ。
 ……ビッグス、頼みがある」
「あ、いやその、俺は……」
「今夜だけ、僕のことは黙っていてくれないかな。
 聞いてたかもしれないけど、しばらく砂漠を離れなくちゃいけない。
 思い切り歌っておきたいんだ」
くしゃくしゃとリディアの頭を撫でながら、ギルバートの足は早くも、商人たちが集まった焚き火の方に向いている。ずいぶんと嬉しそうなので、特別にもう許してあげようとリディアは思った。
キャラバンの所に戻る。たむろっている商人たちにギルバートが話し掛け、座が大きく盛り上がった。詩人のために場所を空け、ありあわせの木材で即席の舞台をつくる。
人が動いて風がおき、煽られた火が大きく揺れる。
ミストの村でもこうやって、いつも火を燃やしていた。どんなに深い霧が出ても、すぐに村が見つかるように。
大事な目印。大切な火。
もっと大きく、どんどん燃やす。もっと。もっと。もっと。もっと。
そうしたら、炎がはじけて──
「リディア? リディア!」
とつぜん体が揺さぶられる。地面が揺れてる。山が怒る。
「リディア、しっかり!」
「……え?
 なんでもないよ?」
「なら、いいけど……具合でも悪いんなら、ちゃんと言わないと」
肩を揺すっていたのはギルバートだった。ちょっとぼんやりしてただけなのに、ずいぶん心配しているみたいだ。
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