リディアも遅れてやってきた。背中に負傷をしているギルバートを気遣っていたが、
彼は弱々しげに微笑みそれを制した。すこしためらったいながらも、彼女もセシルの
回復にむかった。二人分の魔法の力がセシルの傷ついた胸を癒し、徐々に彼の顔に生気が
戻りはじめた。
「・・ロー・・ザ?」
ようやく自分を見つめる彼女の姿を認めたらしい。それを得て安堵したローザは、
うち震えるカインに向き直った。
「カイン・・どうしてあなたがこんなことを」
カインは黙っていた。再びローザは、どうして、と問いかけた。
しかしそれへの答えは、カインの漏らした意外な言葉によって返された。
「・・なぜここに。君は、謹慎処分になっていたはずだ・・」
ローザは驚愕の表情で息をのんだ。はっとカインは口をつぐんだが、もう遅かった。
すでに彼を見つめるローザの瞳には、よりいっそう色濃い疑心が浮かび上がっていた。
「どうして・・・どうしてあなたがそれを・・?」
最終更新:2007年12月12日 04:13