三節 Two of us8


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 もしその時の彼女に普段の冷静さの半分でもあったなら、周囲を取り巻く状況の
不自然さに疑いをもつこともできただろう。落ち着いて考えてみれば、どの噂にしたって
根拠もなにもなく、ずさんなことばかりである。そもそも、なぜこれほど急にそんな
噂が流れ、大衆に浸透していくのか。あの証人、それに王のあまりの短絡ぶりにしても、
平静の彼女なら、そこに何かしら周到なものを感じ取ることができただろう。悪意に
まみれた陰謀の影を。
 けれど、絶えず聞かされる耳を塞ぎたくなるよう中傷に、離ればなれの恋人に想い焦が
れるローザの心は弱りきっていた。そうして、ふとしたときにほんの少しだけでも
セシルを疑ってしまっている自分に気づき、ひどい自己嫌悪に苛まれる。慌てて彼の
無実を自分に言い聞かせる、それを嘲るようにまた周囲から聞こえてくる歪曲した事実。
それらから目を背け、ひとりむせび泣いた。何度も,何度も。徐々に彼女の心は疑心に
蝕まれ、擦り減り、憔悴していった。
 そして、彼女はそれを受け入れてしまったのだ。
「赤い翼のセシルに見限られるようなら、この国も終わりよ!!」 
 尋問をする兵士に向かってローザは吐き捨てるように叫んだ。そして、言葉と一緒に
彼女は生への未練をも捨てさった。
 当然ローザは死刑を覚悟していたのだが、魔導士としての能力と人望を買われていた
ためか、無期限の謹慎処分という形で罰を与えられた。とはいえ、謹慎とは建前で塔への
幽閉というのがその実体であった。だがそんなことはもう、どうでもよかった。むしろ
今の彼女には、生半可な生を与えられたことが苦痛ですらあった。監禁されたローザは
一日中、部屋の隅に踞り、ひとつだけの窓からぼんやりと空を見つめるばかりだった。
そうして、夢うつつにセシルやカインとのあたたかい思い出に浸り、目覚めとともにまた
現実に引き戻されては、ひどく泣いた。日に一度だけあてがわれる粗末な食事すら口に
せず、彼女はみるみるうちにやせ細っていった。彼女が二度と目覚めない夢の中に落ちる
のは時間の問題であり、また彼女自身もそれを待ち望んでいた。
 だが、そんなある日のこと。
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。