「き・・さま、ローザに何をっ・・!!」
「案ずるな、眠らせただけだ。少しばかりお前に興味がわいたのでな、
是非また会いたい。この女はその約束の証と思え。
・・行くぞ、カイン」
分厚い甲冑の内側で冷酷な笑みを浮かべると、ゴルベーザはローザを抱きかかえ、
悠然と去ってゆく。
「・・待・・て」
セシルはその後を追おうと、フラつきながらも杖にしていた槍を構えたが、
「おい」
背後に、いつの間にかクリスタルを手に取ったカインがいた。彼は槍を掴むや否や、
セシルの胸に思うさま拳を叩き付けた。
「ぐあっ!」
「返してもらうぜ」
セシルがリディアの側に倒れ込む。震えながら成りゆきを見ていたリディアは我に返り
セシルの頭を支えると、キッとカインを睨みつけた。カインは無表情のままリディアに
一瞥をくれると、再びセシルのもとから去っていった。
「・・命拾いしたな、セシル」
やがて足音が遠ざかると、再びあたりを沈黙が支配する。
セシルの苦しそうな呼吸の音だけが、それを乱していた。
最終更新:2007年12月12日 04:18