三節 Two of us23

「・・みんな大丈夫?」
 リディアが気遣わしげな声を出す。比較的軽傷だったヤンとギルバートは、彼女の
魔法でだいぶ回復したようだが、セシルだけはいまだ横になったまま、リディアに
治療され続けている。それでも意識だけは保っているが、
「ローザ・・」
 やはりまだ先刻までの出来事が、心に焼き付いているようだ。肉体的にもさながら、
精神的にみても、セシルは彼らのなかでもっとも傷ついていた。
「セシル・・」
「ローザがさらわれてしまうなんて・・」
「クリスタルも・・」
 彼の悲しみに同調し、皆の中にやりきれない思いが立ちこめる。憎い仇を目の前に
しながら全くなす術も無かった彼らは、深い無力感にうちひしがれていた。
「ねえ・・、しっかりしてよ!」
 その重い空気に耐えきれなくなったのか、リディアが声を上げた。
「ローザはきっと無事よ! それに、クリスタルだって取り返せば良いじゃない!」
「リディア・・」
「落ち込んだって、どうにもならないでしょ!」
 彼らは顔を見合わせた。彼女の言う通りだった。
 七つの無邪気な子供の言うことだが、そこには力強い意思があった。
「・・そうだね!」
「うむ・・我ながら情けないことを口にした。
 セシル殿! 今度は我々が力になる番。身体を癒し、救出方法を考えましょう!」
「あぁ・・」
 微笑んだセシルの顔が、不意にかくんと垂れた。
「セシル?」
「ありがとう・・ヤン・・・感謝す・・る・・・よ・・」
「セシル殿ッ!!」

 懸命に呼びかけてくる声の中、セシルは目を閉じた。
 限度を超えた彼の精神に、重い暗幕が垂れた。

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最終更新:2007年12月12日 04:19
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