「・・ならば明朝にでも王にお頼みして船を出していただこう。
幸い、赤い翼の砲撃を逃れた船が何隻かあったはずだ」
「しかし・・、復興のただ中に船を借りるなど」
「なに、そなたたちにはまこと世話になった。王もこれくらいの援助は惜しまれぬはず。
むしろ、これくらいはさせてもらわねば、面子が立たぬと言うものよ」
ヤンの珍しい軽口に、みなが笑った。
それからすこし間を置いて、またヤンが口を開く。
「あの竜騎士は・・?」
「・・彼は、カインは・・バロン竜騎士団の団長で、僕の親友・・・・だった。
共にバロンを抜けようと誓ったのに・・」
「そうであったか・・」
「・・・・どうして、なんだろう・・。信じていたのに。他の、誰よりも・・」
悲痛な表情になるセシルに、ヤンは言葉に詰まってしまう。
「でも」
ポツリ、とこぼれた声に皆が顔を向けた。
声の主は、リディアだった。
「・・え?」
「え・・あ、あのそうじゃなくて・・・セシル、もう休んだ方がいいわよ!」
「そんな、平気だよリディア」
「だめよ! 怪我人のくせに何いってんの!」
「いや・・ほんとに、もう」
「セシル」
ぽん、とセシルの肩を叩きながら、ギルバートが揶揄するように指を立てて言った。
「医者の言うことは素直に聞くものだよ」
結局その言葉で、話し合いは終わってしまった。
最終更新:2007年12月12日 04:20