「ほら、おとなしく横になって!」
「わかった、わかったよ」
乱暴に布団をかぶせるリディアに、セシルは苦笑しながら横になった。
「君も休んだ方がいいよ、リディア」
「いいの、もうすこしで傷も全部治るんだから」
リディアはエーテルを口に含みながら張り切っている。素直に言うことを聞きそうに
無い。セシルはため息をつきながらも、嬉しそうな顔で目を閉じかけた。だが、ついと
横を向いたときにとんでもないものが目に入ってきた。
「・・!? リディア! いったい何本それを飲んだ!?」
「・・・」
リディアは黙ってセシルの胸に手を当てている。セシルは、ベッドの脇にある棚の上に
散乱している、エーテルの空き瓶の山と彼女を見比べた。
エーテルには魔力の源となる精神力を回復させる効果がある。昔から魔道を志す者達に
重宝されてきた良薬なのだが、薬という代物は大なれ小なれ必ず何かしら副作用を伴う。
エーテルにしても例外ではなく、限度を超えて服用し続ければ、それは著しく体力を
損ねる毒となり得る。まして彼女のような幼い子供がこの分量を・・。
「リディア! すぐに休むんだッ!」
「いいのよッ!」
強く頭を振るリディア。セシルは身体を起こし、なだめるように語りかけた。
「・・いいかい、リディア。君のおかげで僕は命を取りとめた。そのことは本当に感謝
しているよ、・・ありがとう。
だけど、これ以上はもういいんだ。今度は君の身体の方が壊れてしまう。だから・・、
お願いだからおとなしく休んでほしい」
彼女はうなだれ、しょぼくれた様子でセシルの言葉を聞いていた。けれど、やがて
でてきた返事はやはり、否定のそれだった。
「いやよ・・・・」
「リディアッ・・!」
「だって! だって、あたし何も出来なかった! ローザも守れなかったもの!
あたし・・、あたしだけ何もしてない!!」
最終更新:2007年12月12日 04:20