三節 Two of us32


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「カイン・・」

 突然聞こえたその名に、思わず彼女はビクリと震えた。
 どうやらセシルの寝言のようだった。

(・・・カイン・・さん)
 リディアはあの忌まわしい竜騎士の姿を思い浮かべた。 
 記憶の中の竜騎士の姿は、兜を深くかぶっており、口元しか見えない。そして・・、
「あの人・・笑ってた」
 ふいに先ほど皆の前で口にしかけた言葉がこぼれていた。それこそが、彼女がカインに
対して並々ならぬ恐怖を抱いている理由。だからこそ、セシルやローザがどうして彼を
あんなにも信頼できるのか、理解できなかった。そしてあの時も、どうしてもセシル達に
ついていく気になれなかった。なぜなら────、

 あの人は、笑っていたのだ。
 目の前で私の村が燃えさかる様子を見て、笑っていた。


 その顔を思い出すと、記憶に深く刻まれた村人達の悲鳴や炎の熱さが、彼女の肌を
ひどく震わせた。暗闇の中、リディアは胸に両手をあわせると、カタカタと身震えた。
 だが、やがて小さな身体に積み上げられ続けた疲労が泥のようにのしかかり、彼女を
深い眠りに誘いこんでいった・・。
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