三節 Two of us38


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ファブール最後の晩。リディアに追い立てられ、早々とセシルは床に就いた。傷は塞がったというのに、怪我人扱いは当分変わりそうにない。
少女が寝入ったころに部屋を抜け出し、人気のない訓練場で黙々と剣を振るう。この先、戦いはいっそう厳しいものになる。今のうちに、新しい武器での感覚を体に叩き込んでおいたほうがいい。
──それ以上に、様々な思いが交錯し、とても眠れそうになかった。
昨晩までは体が休息を命じてくれたが、全快した今はそうも行かない。しかも明日は、いよいよバロンに向けて出発するのだ。これではいけないとわかっていても、考えずにはいられなかった。
カインのこと。ローザのこと。ゴルベーザ。飛空挺。クリスタル。闇。圧倒的な力の差。不安。恐怖。仲間。信頼。変化。
変わってしまったバロン。変わってしまった赤い翼。変わってしまったカイン。
薄暗い空間に浮かぶ雑念に向けて、デスブリンガーの刃を叩きつける。巻き起こった風は壁の松明を揺らめかせ、定まらぬ火影がセシルの心をかき乱す。また刃を振り下ろす。死の太剣の表面で、赤い光が妖しく踊る。
いつしか、渦巻く思いは一点に収束していった。
(カインが……カインも……いつのまに!)
ローザが姿を現した途端のあの動揺。気付かない訳にはいかない。”彼女”というのは彼女のことだ。
わかってしまえば不思議でもなんでもない。カインが想いを寄せるのに、あれ以上相応しい女性はいない。ただセシルが鈍かっただけだ。
(ローザ。君は……知ってたのか?)
だから、最後まで止めようとしたのか? あの状況でも信じられたのか?
自分を愛した男のことを。
(知らなかったのは、僕だけなのか……?)
見えない。二人の間にあるものが。
昔は違った。セシルがカインを、セシルがローザを、まったく同じように大切に思っていた頃は。
変わってしまったセシル。変わってしまったローザ。とっくに崩れていた、三人という絆。
残ったのは、三組のふたり。

やがて何者かが訓練場に現れた。独特のシルエットから察しはついたが、今は誰とも話す気になれず、ひたすらにセシルは剣を振りつづけた。
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