ff6 - 27 figaro


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 ――どうすればそんな顔で笑えるの?
 目の前に立ちはだかって扉の前をふさぐ衛兵から視線を離せずに、ティナは
不可解に思う。
 たとえ過去の記憶を持たなくても。自分以外の女性達が普通に抱く感情を持て
なくても。
 ――私は、他の人たちが持たない“力”を、持っている……。
 そのぐらいは分かっている。そして、いま置かれている状況も。

 ナルシェで目覚めたあの時と一緒なのだろうと思った。
 この扉の外では、私を捕まえようと必死になっている人達がる。そして、扉の外へ
出ていったロック達は、ナルシェにいたあの老人と同じ事をしようとしている。

 ――また、ひとりで逃げなければならないの?

 恐かった。
 放り出されてしまうことが。
 拠となる過去の記憶を持たず、休まる場所を知らず。
 また、ひとりで走り続けなければならない。
 ――そうなるぐらいなら……。

「……開けて、下さい」
 胸を満たしあふれ出た思いが、口の外へと押し出された。けれど小さく掠れた声は、
意味を持った言葉として相手に伝わるほどの力を持たなかった。それを知って、
ティナはもう一度口を開く。
「お願いです。その扉を開けて下さい」
 自分の前に立つ衛兵をまっすぐに見つめた。彼女のあまりにも純粋で真っ直ぐ向け
られてくる視線に、衛兵は思わず一歩後ずさる。
「不安なお気持ちは分かります。ですが、王とロック様は必ず……」
 衛兵の口から気休めに取り繕った言葉が漏れたが、先が続かなかった。ティナは
一歩前へ進み出る。どうやら追い詰められているのは衛兵の方だった。
 そのときである。
「お待ち下さい」
 ティナの背後から聞こえてきたのは、他の誰よりも落ち着きのある声だった。ゆっくりと
語られる言葉の一つ一つに力が宿っているような、そんな不思議な響きで、ティナは
思わず振り返る。
 声の主はフィガロの大臣だと名乗り、頭を下げた。
 彼はずっと――ティナがここへ連れてこられた時から――後ろに控えていたのだが、
自分から何かを語ったり主張したのは今がはじめてだった。
「エドガー様はこの城のことを細部までよくご存知でいらっしゃる。それは、このフィガロという
国そのものを熟知しているということなのです」
 突然なにを言い出すのかと、ティナはじっと大臣を見つめる。
「あなたは先程、神官長からお話を伺っていましたね?」
 その名を聞いてティナの脳裏に浮かんだのは饒舌なる老女――そう、彼女のことだ。
 大臣からの問いに頷き返すと、あの部屋で神官長が語っていた事を思い出そうとして、
ティナは瞼を閉じた。
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