ff6 - 31 figaro

 ティナを残し、扉から外へ出たふたりを出迎えたのは、頭上から降り注ぐ強烈な
日差しだった。「この回廊に屋根とかつけられないのか?」などと、半ば独り言の
ように城の構造への不満を零しながら、ロックは手をかざし僅かに眉をひそめた。
「ところで『ケフカ』って、あの? 帝国の魔導士ケフカが来たってのか?」
 先程、謁見の間でエドガーが口にした言葉を確認するように尋ねる。
「そうらしいな」
 エドガーは淡々と応える。しかしケフカ自らが来城するというのは、どう考えても
好ましい事態とは思えない。
「なんでまた?」
「城攻めの準備かも知れないな」
「おい!」
 どこまでも淡々と応じるエドガーだったが、彼が語る不吉な予測は、この状況で
口にする冗談としてはかなり質の悪いものだった。しかも国王自らがそんな事を
言っているのである、臣下が聞いたらどう思うだろうか。そう咎めようとしてロックは
口を開きかけたのだが。
「……最悪の事態に備えて、既に大臣には今後のことを伝えてある。煮詰めなけ
ればならない点も多くあるが」
 そこで言葉を切ったエドガーは、表情を一変させた。まるでいたずらを思いついた
子どものように微笑むと。        . .. . ..
「まあ安心しろ。この城はそう簡単に落ちやしないさ」
「本気かよ……」
 そんな国王の姿に呆れた声をあげたロックだったが、逆にエドガーは妙に冷めた
口調で反論したのだった。
「残念ながら冗談で国王が務まるほど器用じゃないんでね」
 あーはいはい分かったよと頷いて後に続こうとしたロックの前に、エドガーの左腕が
伸びる。
「ロックはここで待機してくれ。万が一の時には中の大臣に」
 そう言ったエドガーの横顔から笑みは消えていた。
「……分かった」
 頷いたロックの様子にエドガーはまた笑顔を向け、いかにも国王らしい優雅な動きで
左手をひらりと振った。
 それにしてもこの短い時間でいくつもの表情を見せるのだから、充分器用だよと言って
やりたくなったが、勝てる見込みがないので口に出すのはやめておいた。
かわりに、大きく息を吐き出して。
「それじゃあ、俺はここで『ケフカ様』とやらを拝見するとしますかね」
 そう言ってロックは扉によりかかって、エドガーの後ろ姿を見送った

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最終更新:2007年12月12日 05:00
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