序章2


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 やがて日が沈み、空から落ち込んだ影は木々をゆっくりと闇に飲み込んでいった。
フリオニールたちは帝国の黒騎士をやりすごした場所で、静かにそのときを待ちつづけていた。
湖のほとりに茂るこの森は、フリオニールたちにとって馴染みの深い場所だった。
「昔はよくここで遊んだよな…。」
「ガイが拾われたのも、このあたりだったんだよね…。」
 フリオニールとマリアが、ぽつぽつと言葉を交わすのを、レオンハルトは黙って聞いていた。
 レオンハルトにとっても、この森は思い出のたくさん詰まった場所であった。マリアと散歩をし、
フリオニールと剣の稽古をし、ガイと木登りの競争をした。ときにはみんなで語り合った。
 しかし今日、フィン王国の城下町に襲撃をかけてきたパラメキア帝国の兵士たちによって、
それらの思い出はあまりにも突然に奪われてしまった。彼の毎日見てきた家が壊され、燃やされ、
毎日顔を合わせていた人々が、目の前で容赦なく斬りつけられ、死んでいった。両親さえも。
遊び場であり、安らぎの場であったこの森は、今では死の影がまとわりつく恐ろしい墓場と化した。
(悲しんでいる暇など無い。俺にできることは、こいつらを無事に逃がしてやることだけだ。
 こいつらだけは…。)
 その時、不意にガイが立ち上がり、うめき始めた。
「ウウウ…」
「どうした、ガイ。」
「ケムリ…ケムリのにおい、する。火だ。」
 野生児として育ったガイは、言語などを自由に操れない代わりに、常人より何倍も
研ぎ澄まされた五感を身につけていた。フリオニールたちには煙の匂いなどまったく
わからなかったが、ガイの感覚が信じられるものであることは経験的に知っていた。
 ほどなく、遠くに赤いものがうごめくのが見えた。
「あいつら森に火を放ちやがったのか。まずい、すぐに逃げ出さないと!」
 走り出そうとしたフリオニールの肩を、レオンハルトがつかんだ。
「レオンハルト、急がないと!」
「奴らは俺たちをあぶり出す魂胆だ。森の外で待ち伏せしているはず。四人で逃げればまとめて殺されてしまうだろう。
俺はおとりになって奴らの気を引くから、お前らはそのあいだに逃げろ!」

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