序章5


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首無しの黒騎士の姿はもちろん気味の悪いものであったが、二人にとっては
直面した死の脅威を退けたという安堵の方が大きかった。残された馬は暴れる気配はなく、
辺りをふらふらと歩きまわっている。知能が高くないようだ。
 しかし安心はできない。森に放たれた炎はどんどんと木々を侵食している。
帝国兵が森の外で待ち伏せしている可能性も大きく、無事に逃げられるという保障はない。
それでもレオンハルトの遺志を継ぎ、全力で逃げなければならないとフリオニールは気を引き締めた。
 マリアはいつの間にか気を失っていた。次々と襲い来る死の重圧に耐えられなくなったのだろう。
「ありがとうガイ。もう駄目かと思ったけれどお前のおかげで助かったよ。早くマリアを連れて逃げよう。」
「わかった。」
 二人が武器をしまってふたたびマリアを担ぎ上げようとしたときだった。
「これで勝ったと思うなよ!」
 不意に声がした。そのくぐもった低い声は、遠方に跳ね飛ばされた黒騎士の頭部から発せられていた。
フリオニールは自分の脚ががたがたと震えだすのを感じた。
「馬鹿が、死ねい!!」
 身構えたときにはすでに遅かった。
「ぐっ!」
 うめき声とともに倒れこんだガイの腹部には、拳大の穴が空けられていた。真っ赤な血が噴き出した。
 フリオニールとガイが黒騎士の首に気を取られている間に、黒騎士の体は槍を構えていたのだ。
(まさか…首から下だけで動くことができるなんて…!)
 フリオニールは絶望した。黒騎士は声だけでなく、根本的な肉体のつくり自体が人間のそれとは大きくかけ離れていた。
彼にとって正体不明であったパラメキア帝国の実態は、なおも得体の知れないおぞましい影となって、彼の心を支配した。
(俺たちの敵は、人間じゃない…)
 恐怖に動けなくなったフリオニールの体を、鮮血に染まった槍が貫いた。
 崩れ落ちていく黒騎士の胴体を見ながら、彼の意識はだんだんと遠のいていった。

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