竜の騎士団 6

 無理もない。むしろ当然の結果といえた。そもそも飛竜は、一生のうち一人の人間にしか心を
許さない。しかも成長すればするほど彼らは頑になる。そのため、通常は新たな王の誕生と、
主人の認識の儀式をもって竜騎士団長の位を継承することになっていた。それでも副長ならば、
あるいは────という一抹の希望があったのだが。彼ほどの男が認められなかった以上、
他に挑もうとする者もほとんどいなかった。
 結局その後にわずかな数人が挑み、最後の一人は逃げ遅れて尾撃の餌食になるという苦々しい
顛末をもらって、先行きに暗い影を残しながら儀式は中断に終わった。

 翌日から、とりあえず儀式については保留することにして、次期団長の取り決めについての
会議が開かれることになった。
 が、これがいっこうにまとまらなかった。
「ともかく早急に団長を決める必要があります。西方への遠征も控えているのですから」
「そうはいっても、我々の一案だけで裁ききれるほど容易い問題でもありますまい」
「王に決めていただいては如何か? 飛竜の王が裁かぬ以上、我らの王にご決断を仰ぐべきかと」
「王はこの件に関与しないと言われている。騎士団が解決すべき問題だと仰せだ」
「ならば私は副長殿をお立てしたい。副長殿ならば人格、能力ともに申し分無いでしょう」
「お待ちください! 継承の儀は初代の頃から守られてきた鉄の掟!
 それをないがしろにするのは、騎士団の教えに背く振る舞いではありませんか?」
「しかし儀式は行った! だが現に飛竜は主を選ばなかったでしょう」
「今は産卵期で、飛竜も気が立っております。時期を見て再度儀式を行えば……!」
「悠長な話だ! 早急な対処が必要であると申し上げたはずですぞ!」
「それは儀式に挑まなかった貴公の申し上げる所ではないでしょう!」
「そちらこそ、負け惜しみではないのか!?」
「何をッ!!」
 こんな具合である。
 次の日以後も、飽きもせずに毎回同じような議論の応酬の繰り返し。副長は、馬鹿馬鹿しいやら
苛立たしいやらでほとほとうんざりしていた。

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最終更新:2007年12月12日 22:40
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