竜の騎士団 7


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 彼の頭を痛ませているのはそれだけではない。このところよく耳にする、団長の死についての
噂がそれだ。団員達が団長は暗殺されたのではないかなどと騒いでいるらしいのである。そんな
話が広まるにしても、良くも悪くも団長は皆に愛されていたということなのだろうが。
 だが、指揮官を失って騎士団に強い結束が必要とされている時期であるだけに、それを内側から
崩すような真似を見過すわけにはいかない。まことしやかな噂の類いを耳にする度に、副長は強く
部下を叱責した。自分が悪意ある噂の標的にされているらしいこともまた気に食わなかったが、
彼が真実案じていたのは、何かのはずみでその誹謗がカインの耳に入ることだった。
 副長は団長の急死以来、実によくカインを気遣った。ほとんど毎日のように、足繁くカインの
もとに赴き、近頃では自宅よりもカインの家にいることの方が多いくらいだった。
 というより、そこはもはや彼の家でもあった。彼は団長の死後すぐに、養う者のいなくなった
カインの後見を王に申し出ていたのだ。

 それは副長という立場にあった彼の忠誠心からの行為だったのだろうか?

「こんにちはご子息」
「こんにちは、フクチョウ」
 その日も学校帰りのカインを捕まえ、そのまま家路をともにした。
 ご子息、という言葉の意味を解していない様子のカインは初め、私の名はカインです、などと
主張していたものだったが、やがてそのルールに気がついたらしく、素直に彼をフクチョウと
呼ぶようになった。副長はこのやりとりが大好きだった。
「傷だらけのところをみると、どうやら槍の稽古の帰りですかな?」
「うん、またセシルと訓練をしたのです。今日は私の方が負けてしまいました」
 すこし悔しそうに、けれどどこか誇らしそうに語るカインの横顔を見ながら、副長は内心で舌を
巻いた。生まれ持った天賦の才に加え、玩具の代わりに槍を使い続けてきたカインの成長ぶりは、
その幼少の頃から良く見知っている。技だけなら、もはや騎士団の下級団員すら打ち負かせるほど
だろう。
 そのカインを負かすとは……。
 子供というのはまったく末恐ろしい。そう思う自分は随分年をとったものだなと、ふいに何だか
可笑しくなり、笑った。カインも笑った。
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