竜の騎士団 10


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 夜分、それもだしぬけに騎士団の重鎮達がやってきたものだから、初老の女中はひどく驚き、
すっかり取り乱してしまった。飛竜はどこにいるかと声高に問いつめると、震える声で中庭に
案内された。庭に出た一同は、息をのんだ。
 そこには果実を食みながら静かに横たわる飛竜と、小さな少年の姿があった。

 皆、唖然としていた。カインは自分をみつめる大人たちに気づき、ぺこりと頭を下げてから、
彼らの見守る前で飛竜に果実をあてがった。
「……ご子息、どうやってその飛竜を手なずけたのです」
 副長が代表して聞いた。カインは落ち着きはらって答えた。
「いいえ、手なずけてなどおりません。私は父の帰りを待っておりました。それでどうやら、
父の竜も同じのようでした。ですからこうして二人で待っているだけです」
 カインが飛竜の首筋をなでてやると、竜は穏やかに喉を鳴らした。 
 騎士達はそれでもなお信じがたいという表情で立ち尽くしていた。その中で副長がただひとり、
その身を深く恥に染めていた。
 何ということだろう。自分はいったい何年もの間、竜と共に生きてきたのか……。
 この若々しい竜は知らないのだ。己が主君の死を。未だに主の帰りを待ち続けているのだ。
それを新たな主人に従わせようなどと、屈辱もいい所である。誇り高い飛竜が二心など抱こう
はずもなかった。
 なんと自分は浅はかで、傲慢だったことか。……それなのにこの子は……カインは…。
「────ご子息、とんだ夜分にお邪魔をいたしました。これにて我々は失礼いたします」
 顔を上げた副長が一礼してその場を去ると、呆然としていた男達も我に返り、その後に続いて
ちらほらと引き上げていった。
 カインは黙って飛竜にもたれこんだまま、ぼうっと空を見つめていた。
 不思議と、その瞳は飛竜のそれととてもよく似ていた。
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