「Prelude12」


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 額から汗が流れ落ちる。無理もない――もう数時間もずっと詠唱を続けているのだから。
 魔法障壁――シェルとプロテスの応用魔法であるその障壁を維持するのには、通常の白魔導士の精神力では耐えることは出来ないであろう。
 苛烈な任務だったが――逃げるわけにはいかなかった。最奥に敵が侵入しないように命を賭して門前を守る友軍の兵士を、とてつもない殺傷力を持つアルケィディア帝国軍の小型飛空挺の砲火に曝すことなど出来ない。
「ひっ――!」
 息を飲み込んだような悲鳴を聞いて、彼は顔を上げた。そして――絶望的な光景を目の当たりにした。
 眼前――クリスタルの間の入り口から現れたのは――紛れもない、アルケィディア帝国軍の兵士の姿だった。
「うわあああああっ!」
 悲鳴。そして――
 一番扉に近い位置にいた白魔導士の一人が、駆け寄ってきたアルケィディア帝国軍の兵士によって斬り下げられた。剣が彼の体を走ってからは、彼は悲鳴すら上げずに床に沈みこんだ。どさ、というやけに重い音だけが耳にこびりついて離れなかった。
 彼を切り捨てた兵士は、その奥にいた彼の姿を認めると剣を振り上げる。
 その切っ先が胸に沈むその瞬間まで――彼は、呪文の詠唱を止めることはなかった。
「――――……」
 少しでも魔法障壁の維持を――
 薄れ行く意識の中、見上げた視界には――崩壊する魔法障壁を見上げ、静かに笑みを浮かべる兵士の姿が映った。
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