一節 闇と霧の邂逅


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バロンの北西、ミストの村への道程は、山脈に遮られてはいるものの、しばらくはなだらかな平野が続いている。見晴らしの良い草原のただなかで、セシルとカインは、6体からなるゴブリンの群と対峙していた。
「やれやれ、またか。やはり最近、なにかがおかしい」
この卑小な妖魔に出くわすのは、バロンを出てから早くもこれで4度目である。
魔物としてはもっとも弱い部類に入り、セシルたちにとっては、苦もなく一撃で葬ることのできる相手だが、こうも頻繁に出てこられては、さすがに鬱陶しい。
それにこの程度の、物陰にでも潜んでいるべき小物までが、白昼に数多く徘徊しているというのも──あまり良い兆候ではない。
「一ヶ所に固まっているな。僕が片付けよう」
相棒の応答を待たず、セシルは剣を抜き放った。漆黒の刀身をかざし、その先端に意識の焦点を合わせる。
剣に染み付いた闇が、周囲の空間をも侵蝕する手応えを得て、セシルは一気に刃を振り下ろした。巻き起こった黒い風が彼の生命の一部を喰らい、仮初めの意志を得てゴブリンたちに踊りかかる。
悲鳴。飛び吊る体液。そして、断末魔。
斬撃を経て殺気を衝撃波へと変化させ、広範囲の敵を切り刻む──暗黒剣を極めた者のみが放つ奥義である。
「こんな雑魚にいちいち奥の手を使っていては、ミストまで保たんぞ?」
「いい加減、僕もうんざりしてるからね。
 次はお前に任せるさ」
「フッ、いい心がけだ」
カインと冗談を交わしつつ、敵に触れることのなかった剣を鞘へと戻すセシル。だがその額には汗が浮いている。人間が負の力を操ることの代償だ。
こころなしか、普段よりも疲労が重く感じられるのは、己の技に対する迷いのせいか。
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