竜の騎士団 12


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 だが、ひとつだけ違う。カインはうずくまりながら、一本の槍を抱え込んでいた。その場の
誰一人としてその槍に見覚えのないものはいない。切っ先だけでなくその柄までを黒ずんだ血糊に
染めた長槍は、彼らの団長、カインの父のものだった。
 そんなカインと槍を包み込むように、飛竜がその身を寄せていた。
「………」
 はじめに、途方もない無力感。次に思い出したような責任感が、そして洪水のようにおしよせた
言葉がめまぐるしく副長の頭をかき回した。
 恐れていたことが現実となってしまった。とうとうカインを守ってやることが出来なかった。
 悔いたところで今さらどうにもならないだろう。今はただこの子を救いだせる言葉が欲しい。
 だが何を言ってやればいいのだ。いや、何か言う権利が自分にはあるのだろうか。
 わからない。誰か教えてくれ。私はどうすればいいんだ。どうすればこの子の力になれる……。

 困惑しながら目を伏せていた副長は、ふいに背後で騎士達がざわめくのを感じた。
 顔を上げると、いつのまにかカインは立ち上がっていた。そしてぎこちない手つきで槍を返し、
その切っ先をゆっくりと顔に近づけた。
「よせッ!!」
 危険を感じた副長は槍を取り上げようと駆け寄りかけたが、彼の予想に反してカインは刃先の
血を拭っただけで、すぐに槍を握り直すと、そっと飛竜の首筋に手を這わせた。そして彼の首に
かけられた一条の金色の綱を断ち切った。飛竜の王たる印、そしてその束縛を解き放ったのだ。
 その場の全員が呆気にとられた。王から王へと受け継がれる偉大な勲章を、ほんの七歳の子供が
あっさりと切ってしまったのだ。飛竜自身も戸惑っているようだった。訝しげに首をひねったり、
身をよじったりして、そのうち足下のカインに目を向けた。カインが頷いてやる。すると竜は
勢いよく飛び上がり、雄大な両翼をはためかせて遥か上空を舞い踊った。主人を失った悲しみと、
自由を与えられた歓び、その両方に彼は高々と雄叫びをあげた。
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