竜の騎士団 15

 竜騎士団の入団式。
 この年の式はバロンの歴史に刻まれる一日となった。

 若き見習い騎士達はひとりずつのその名を呼ばれ、彼らの所属を申し伝えられる。名を呼ばれた
青年達は次々と壇上に上がり、騎士勲章を受け取ると、まだ幼さの残る顔を誇らしげに輝かせて、
各々の隊の列に散っていった。
 ところが、カインの名だけが呼ばれない。
 そして、
「続いて騎士団長任命の式典を行う」
 途端に会場内の騎士達が一斉に立ち上がった。どうやら事情を聞いていたらしい新人騎士も
すぐに立ち上がり、何も知らない者だけが慌ててそれに習った。式典進行の騎士は、再び声を
張り上げる。
「竜騎士カイン=ハイウィンド、前へ!!」
 驚きながらも前に進み出るカインの目に、壇上で待つ副長の姿が映った。そうして壇に上がった
カインが礼をしようとした時、それを遮るように副長は深く跪いた。 
「副長……! これは……!?」
「お待ちしておりました、団長」
 驚くカインに、副長は優しく事実を告げる。
「団長? まさか…!?」
「そうです。我々はあの日から、ずっと貴方をお待ちしていたのです。
 ………長い間でした。これでようやく肩の荷が降りた思いです」
「お待ちください! そんなっ、私はそのような器では!」
「いいえ、貴方は長として必要な資質を全て備えられている。それでも足りぬと言うのなら、
どうか我々に貴方をお支えさせていただきたい」
「ですが……副長…」
「さあ、この槍をお返ししましょう。これは貴方が持つべきものです」
 副長は一本の槍を差し出す。忘れるはずもない、幼い日の彼自身が見つけ出した槍だ。
 彼の手はあの時よりもずっと大きくなったのに、槍はなおいっそう長く重々しく感じられた。

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最終更新:2007年12月13日 01:12
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