「今日はここでキャンプを張ろう。幸い見晴らしもよくてモンスターも寄り付いてる様子は無い」
結局、明日カーウェンへ向かい、その後の方針はそれから決める事にした。
ファリスが持ち前のリーダーシップを発揮して、野宿経験のほとんどないレナとガラフを指導していた。
「ガラフは、さっきあそこの林の奥にあった沢に水を汲みにいってくれ。レナはオレと火を起こすための薪を拾いに行くぞ」
「うむ、まかされた」
「はい」
ガラフは太い竹で出来た水筒を数本抱え持って林へ入っていった。
レナは最初こそ戸惑ってはいたが、今はピクニック気分のようだ。
「俺はここで見張りをしてるよ」
バッツをキャンプに残し、ファリスとレナは先ほどガラフが入っていった林へと入っていった。
薪拾いをしている間、レナは故郷タイクーン城について話していた。
「・・・それで中庭の花が春になると一斉に咲き始めるの。テラスに出ると凄くいい香りがするのよ」
仕事が忙しくて、花の香りを楽しむなんてあまりできないけどね。と最後に付け加えた。
ファリスは、レナの話を聞きながら、彼女の胸元に光るペンダントを盗み見ていた。
「そう、そのテラスには、世界で最後の1頭になった飛竜がいるんだけど・・・」
『世界で一頭しかいない最後の竜』、見たことのないはずのその姿を、何故か自分は知っている。記憶の片隅に。
「お父様が風の神殿へ飛んで行ったきりね、タイクーンに戻っていればいいのだけど・・・」
レナが心配そうに俯く。それほどに大切なのだろう。友人、いや、家族のように思っているかもしれない。
自分と、シルドラのように。
「へぇ、飛竜か、その背に乗ってみたいもんだね」
レナが笑顔に戻る。
「そうでしょ?空から下を見ると何もかもが小さく見えるのよ。まるで魔法のレビテト・・・じゃなくて、ミニマムをかけたようなの。
・・・何故かしら、この話をすると決まって魔法を間違えるのよね・・・」
最終更新:2007年12月13日 03:50