FF5 56 飛竜7

「なんだい・・・?わりいけど下で飲んでくんねえか、俺は一人になりてぇんだ」
男は大きな体をうな垂れたまま、四人のほうを見ずに言った。
どうやら町中の人に言ったはいいが町中の人に信じてもらえず、相当落ち込んでいるようだった。
バッツが一歩前へ出る。
「なあ、あんた北の山へ竜が飛んでいったのを見たらしいな。その事を聞きたいんだ」
途端に目を輝かせて男はがたっと立ち上がった。
「あんたら俺の話を聞いてくれんのか!おお、ここへ来てやっと信じてくれる人間が来てくれるとは!」
こんな調子のいい人間の話が本当なのか、分からなかったがとりあえず話を聞くことにした。
「うっはっは、まあ座ってくれや。どこから喋ったもんかな・・・」
話を聞いてくれるのが嬉しいらしく、バッツ達四人のことを何者なのかも聞かなかった。
バッツ達が席につくと、男は待ちかねたように喋りだした。
「今日の早朝のことなんだが、俺は港の荷物の整理をしてたんだ。そしたらよ、西から
何かが飛んできたんだ。最初は気にも止めなかった、鳥かなんかだと思ってたからな」
男は髭をもさもさといじりながら、思い出しながら話している。
「だが近づいてくるにつれ、鳥なんかじゃねえ、ありゃ竜じゃねえかって思って追いかけ
たんだ。あいつは町の北を通って北の山へ消えていった。俺は目がいいんだ!確かだぜ!」
間髪入れずにレナが質問した。
「その竜、えっと・・・そう、鎧を纏っていませんでしたか?」
「おお!嬢ちゃんあの竜を知ってんのか?確かにそうだったよ」
「間違いない、お父様の飛竜だわ」
バッツがレナに尋ねる。
「その飛竜は、俺達四人を乗せて飛べるんじゃないか?」
「ウォルスまでだって楽に飛べるはずよ」
ガラフが頷きながら歓喜した。
「うむ、上出来じゃ!では明日、北の山を目指すとしよう」
誰も異論は唱えなかった。次の目的地が決まったところで、バッツ達は宿に戻る事にした。
「そうだ、おっさん、あんたの奥さんが家で待ってるそうだ」
この伝言に、男はぎょっとなった。と思うと初めて見たときのようにがくっとうな垂れた。
「あぁ~、明日からトイレ掃除一週間かなぁ。それならまだいいか・・・」
バッツ達は思わず苦笑した。

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最終更新:2007年12月13日 04:00
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