「無事か!」
「私は大丈夫だ! それよりも・・!」
駆け寄ると、ギルバートが胸を抑えたまま苦しげに踞っていた。
「ここにいたのかギルバート! 君の方は、」
「ゲホゴホゴホッ、ガハッゴハッゴホッ……!」
「!?」
咳き込む口を抑えるギルバートの手から、赤い色がにじみ出ていた。
「ギルバート! 怪我をしたのか!?」
「ぼ、僕のことは気にするな! もう一度、来……ゴホ、ゲホゲホッ!」
苦しみながら彼が指し示す方を見ると、海神は再び尾を振り回し始めていた。
「セシル殿! 彼は私が!」
ヤンがギルバートの背に手を添えながら、リヴァイアサンを目で示す。セシルは頷き、
剣を抜いて船の先端に走り出た。
「船長! 僕の身体を支えていてくれ!」
「お、おう!」
彼の声の強さに気圧され、船長は少しだけ躊躇した後に舵を離すと、その野太い腕で
彼の腰を守る。もはや舵など握っていても意味がなかった。
すぐさまセシルは全精力を黒い刃に注ぐ。刀身から闇が溢れ出した。
後のことを考えている場合ではない。この剣ならば、必ず耐えてくれるはず。
ひたすら機を待ち続けるセシル。やがて、リヴァイサンが大きく身をよじった。
「うおおぉぉぉぉ!!」
次の瞬間、鋭い鞭のように襲いかかるその尾撃にむかって、セシルは剣をかざした。
最終更新:2007年12月13日 04:34