津波はもはや目と鼻の先まで迫っている。その高さは、ほんの数分前までそこにあった帆など、
ゆうに超えている。セシルは帆柱の根元に視線をやった。ヤンがギルバートと自分の身体を
柱にくくりつけている。リディアは・・、
「・・リディア? リディア、どこだ!?」
あわてて振り返ると、先ほどまですぐ後ろにいた少女の姿はそこになかった。愕然として船を
見回すセシル、彼女は瞬時に見つかった。リディアは無防備な甲板のど真ん中に膝をついていた。
駆け回る船員たちの波に押されて、転ばされていたのだ。
「リディア、逃げろーーッ!!」
「ば、馬鹿野郎!!」
気づけばセシルは縄を解き、船長の静止も耳に入らず飛び出していた。
リディアが走りよるセシルに気づいて振り返ったそのとき、彼女の瞳は青に染まった。
「キャアァーーーー」
「リディア!!」
甲高い叫び声は、すぐに消えた。
神を傷つけた咎が海の怒りを呼び、ついにその鉄槌が彼らに振り落とされた。
最終更新:2007年12月13日 04:35