「どうかした?」
「え・・あの、その・・・」
「ほら、こっち」
部屋の入り口で、なにやら緊張した様子で立ち止まるローザを窓まで招くと、セシルは
ひょいと窓枠に足をかけた。
「ちょっと、セシル!?」
「大丈夫、大丈夫」
外壁にたらしていた梯子をつかむと、するするとセシルは塔の上に登っていった。
「ほら、君もおいでよローザ」
「え・・えぇ」
「下を見ないようにね」
高所の強い風の中を、恐る恐ると梯子を上ってくるローザに手を差し伸べて引き上げてやる。
ちょっぴり危ないことをこなしたことで、二人の心は少しばかり沸き立っていた。
「怖かった!」
「最初はそうだよ」
「いつもここにいるの?」
「いや、ちち・・陛下に、子供の頃叱られるとここに逃げてきたんだ。懐かしいな。
ここに呼んだのは君が初めてだよ」
「そう・・。あぁ、すごいわ・・!」
頂上から見下ろす風景に、ローザは息をのんだ。夜の黒に塗られた巨大なバロンの城塞、
そしてその向こうに見える不知火のような街の灯。それらを美しい星空が見守っていた。
絵画のようなその風景をながめながら、二人はパンを頬張りつつ、他愛も無い話を交わした。
最終更新:2007年12月13日 04:39