二節 試練16


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 涙を目にためて、ジェシーは震えていた。自分たちを冒涜した者が、のうのうと目の前に
立っている屈辱に耐えきれなくなったのだろう。彼女はセシルを突き飛ばし、走り去っていった。
「・・あれも、まだ若い娘でな」
「・・・」
「・・もちろん、パラディンへの道は容易ではない」
 悲しそうに彼女の去った後を見つめていた長老は、また話を戻した。
「東に山がある。もとより名など無かったのだが、伝説にちなんで今では『試練の山』と
呼ばれておる。その頂きには、登ってきた者の運命を示してくれる何かがあるらしい。
もしも、そなたの持つ光が真のものならば・・あるいは」 
「しかし、早く仲間を助け出さねば・・!」
 焦りを抑えきれず言葉が漏れる。長老の言葉には確かな響きがあったが、山を登ってくる
などという話は今の彼にはひどく悠長なことに思えた。
「・・どうやら、そなたの大事な人のようじゃな。はやる気持ちはよく分かる。だが、そなたが
まず救わねばならぬ人間は、他におる」
「そんな・・誰が!」
「そなた自身じゃ」
「・・!」
「そなたは自身の背負っている罪の重みをよく理解しておるようだ。おそらく、ここまでの旅に
おいてそなたはずっとその思いを側に置き続けたのだろう。それは決して悪い事ではない。
 だが、もう終わりにする時だ。心に闇があっては、聖なる光を受け入れる事は出来まい。
そなたの仲間を救うために、今こそ背負い続けた重荷を手放すのだ。この地は、それを許して
くれるだろう。その時こそ、そなたの持つ邪悪な剣は、聖なる光に輝くはずじゃ」

(・・それが、許されるのか)

「少なくとも、わしは許すだろう。セシル殿」
 セシルは顔を上げた。
 心を見透かしたような言葉。はじめて彼の名を呼んだ長老の表情は、慈愛に満ちたものだった。
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