「・・わかりました・・・」
────運命。あまりに実感の湧かない言葉。
だが、今このとき自分がここに、それもたった一人で訪れたことが偶然とは思えなかった。
この人は試練と言う。何だっていい、もしも僕が、既にその道を歩み始めているのだとしたら。
・・どのみち、今の僕にはこの人にすがるしかない。信じてみよう、この人の言葉を。
他のなによりも、僕自身を救うために。
「では・・、すぐにでも東に向かおうと思います」
「あいや、待たれよ」
踵を返すセシルを長老が引き止めた。
「多くの者が試練の山を志していったが、誰ひとりとて戻ってはこなかった。そうして志半ばで
倒れていった彼らの骸は山の魔物にとりつかれ、今では山は不死者たちの巣窟じゃ。そなたの
暗黒剣だけでは分が悪かろう。ひとつ、魔導士の供をつれてゆくがよい」
「供・・」
一瞬、ジェシーの顔が頭に浮かび、彼はそれを断ろうとしたが、
「パロム、ポロム!!」
長老が手を打ち鳴らす。すぐに奥から小さな少女がやってきた。
「お呼びでしょうか」
「む・・パロムはどうした?」
「・・パロムったら、また!」
途端に少女は腹立たしげにかぶりを振る。
と、次の瞬間、セシルの背後で爆発のような音とともに煙幕が上がった。
最終更新:2007年12月13日 04:42