二節 試練29


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「ですが……パロムとポロムにもしものことがあったら!」
 どこかに飲み込まれてゆくような不安を覚え、ジェシーの口調は乱れ始めていた。
「ヤツに襲われる、と言いたいのか?」
「その可能性は十分にあります!」
「…ジェシーよ、お前は確かに大した黒魔法の使い手じゃ。
 だが、強大なバロンの長たる軍、赤い翼を率いていた男が、そう容易くあの程度の術に
囚われると思うか?」
「……?」
 言葉の意味をはかりかねるジェシーに、長老は手をかざす。
「もしもわしが今、お前に変化の魔法を唱えたとて、お前はその術にかかるか?」
 彼女は、はっと目を見開いた。長老は満足げに頷く。
「変化の魔法は、確かに研究材料としては優秀じゃが、実用性から言えばどれも失敗作じゃろう。
ある程度の力を備えた者にすれば、警戒さえ怠らなければ、その術をはねのけることなど容易い」
「……」
「そしてあの男は、ここにきてからただの一度としてその剣に手をかけようとはしなかった。
およそ警戒心というものを抱いてなかったのじゃろう。でもなければ、あのような場で彼奴が
そなたの手にかかることなどなかったはずじゃ。……さぞや、重い覚悟を秘めていたのじゃろう。
あのときお前の手で命を失ったとしても、それを受け入れるだけの意志はあったようじゃからな」
 ジェシーは手の平に視線を落とした。しなやかな色白の指に、まだ蛙のぬめるような感触が
残っているような気がした。無抵抗に、自分にされるがままになっていた仇の感触。
「それだけは、あのセシルという騎士の唯一確かな光じゃ。奴は自らが犯した罪の重さをよく
わかっておる。ことによると、わしらよりもな。その上で、奴は正面からその重圧と向き合って
生きて来たのだ。わしがあの男に賭けてみようと思ったのも、そこにある。
 ……その点では、そなたのいうように、わしは彼奴を信じておるのかもしれん」
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