三節 山間4


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 とにもかくにも今のセシルには関わりたくない相手だった。以前は魔法具と赤い翼の砲撃で
難なく追い払うことが出来たが、生身ではそうやすやすとはいかないだろう。
 幸いズーはセシルたちに気づいていないらしく、無難にやり過ごせると思ったのだが、
「あんちゃん、オイラに任せな!」
 上達に次ぐ上達で無鉄砲の塊となっていたパロムは、止める間もなく鬼の角を突いていた。
悪戯に刺激された巨鳥は、怒りに燃えた目で小賢しい獲物を睨みつけた。
「おわわわっ!!」
 慌ててパロムはセシルの後ろに引っ込む。当たり前だ。子供の魔法の一発やそこらでなんとか
なるような相手じゃない。諦めて、双子を遠ざけると、セシルは剣を抜いた。
 ズーも相手を定めたらしく、真っすぐにセシルに狙いを付けて飛び込んでくる。ふいに、
嘴を突き出すその体勢が、カインの凄まじい槍撃を思わせた。だが。
(カインと比べれば!)
 セシルは冷静に巨鳥の動きを捉え、その嘴が触れるか触れぬかという間に身を翻し、躱しざまに
斬撃を浴びせた。
(────浅いか!)
 流石に今まで戦ったことの無い類いの相手だけに、間合いを合わせ損ねてしまう。舌打ちをして
すぐさま立ち上がり、セシルは続く猛追を予想して構えた。だが、彼の予期に反して、大きな
震動とともにその場に重い音が響いた。
 見れば地に崩れ落ちたズーが、ギャアギャアとのたうち回っている。翼を叩き付けながら悶え
苦しんでいたズーは、突然、烏賊墨のようなどす黒い液体を吐き出した。おそらくそれは彼の
血液だったのだろうか。ゴポゴポとまるで沸騰したように泡立つ液体は、噴水のように絶え間なく
溢れだしてくる。
 分けもわからぬまま様子を窺っていると、やがて巨鳥はあたりを真っ黒に染めて、息絶えた。
草原に伏せていたパロムとポロムが勝鬨を上げる。
「すげーなあんちゃん!」
「流石ですわ、セシルさん」
「あ……あぁ」
 歓喜する二人に、セシルはぼんやりと答えた。自ら手を下していながら、どうも腑に落ちない。
あの程度で仕留められるような相手だったのだろうか。首を傾げながらも、剣を鞘に納めようと
して、彼は目を疑った。
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