三節 山間8


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「だめだ、もう無理。オイラこっから一歩も動かないぞ」
「パロム! 置いてくわよ!」
 また、相変わらずなやり取りを交わしている。セシルは顔をほころばせかけながら、しかし
努めて真面目な風を装った。
「いや、なんだか僕も疲れたよポロム。あそこの登りきったところで少し休まないか?」
「えっ……そ、そうですか。セシルさんがそうおっしゃるなら……」
「ヒャッホー、流石あんちゃん! 話が分かるぜ」
 言うが早いが、へたりこんでいたパロムは飛ぶように起き上がると、いち早く丘の上に向かって
駆け出してゆく。
「動かないって言ったくせに!」と呆れるポロムも、どこか安堵した様子が見える。
「あまり無理をしない方がいいよ」
 そう言いかけて、セシルは慌てて口をつぐんだ。せっかく彼女の気も緩みかけているのに、
そんなことを言えばまた意固地になって「先を急ぐべきです」などと言いだすかもしれない。
 ポロムには、無理をしているというか、どこか背伸びをし過ぎているような嫌いがあることを、
セシルも短い付き合いのうちに学んでいた。街で二人の装備を整えた時にも、大はしゃぎで商品を
漁るパロムに対して、ポロムの方は「私は未熟者ですから」と、頑として受け付けなかった。
 パロムを見習えとは決して言わないが、二人合わせて一人の子供だったら、とても釣り合いの
とれた子だったろうにな。セシルの口元から苦笑いがこぼれる。ポロムを労うように小さな肩を
叩くと、彼らも丘に向かって歩き出した。
 と、さっき飛び出していったばかりのパロムが、今度はなにやら慌てた様子で引き返してきた。

「あんちゃん、誰かいるぜ!」
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。