「もしかして…僕を騙した?」
相変わらず悠然と戦いの様子を並べながら、カダージュは会話を続ける。
「やっぱり母さんはそっちなんだろう?」
バイクから降り、落ちつかなげに辺りをうろうろ歩き回りながら言う。
「怒鳴るなよぉ」
立てかけたバイクに寄りかかりながら、茶化すように言う。
「あんたとは話したくない。…社長に代わって」
暫しの沈黙。
「…社長?これ、どういうことなのか説明してもらいたいなぁ」
危険なほど甘い笑みを浮かべながら、脅しをきかせる響きを伴って言い放つと、また荒野の方に目をやる。
まだ戦いが続いていた。
もう何度目かわからないクローの一撃を、クラウドは相変わらず剣で受け止める。
しかし、その拍子に、ハンドルを握る左腕に激痛が走った。
その痛みは頭にも及び、偏頭痛のような感覚に一瞬目が廻る。
一年と半年以上、彼をずっと苛み、苦しめつづけてきた苦痛だった。
焼石が冷めるのを待たず、ロッズはスタンクローを器用に剣に引っ掻け、
クラウドの握力が落ちていた一瞬の内に、彼のファースト剣を投げ飛ばしてしまった。
すかさずヤズーが逆側から接近し、車体を叩きつけてバイク同士を密着させる。ロッズも同じようにしていた。
これでクラウドから全ての反撃の手段が奪われた。
剣は失われ、バイクは挟まれて身動きが取れない。さらに40匹以上のモンスターが周囲を並走している。
そしてヤズーが勝ち誇った表情で鼻を鳴らし、短銃をクラウドの側頭部につきつけた時、
―――彼等を取り囲んでいたモンスターの群れが、一瞬にして消え去った。
それを見たロッズはまたも笑いながらクラウドから離れ、ヤズーもロッズに一拍遅れて去っていった。
カダージュがモンスターを消し去り、2人に引き上げの合図を出したのだった。
クラウドはバイクを停め、彼らが去っていったほうを呆然と眺めていた。
あれほど執念深く追って来たと思ったら、いきなり退いていった。
…レノからの電話と関係があるのだろうか?
ぼんやりと思考をめぐらす。そうだ。あいつから何か聞き出せるかもしれない。
そう考えたクラウドは、地面に投げ捨てられた剣を探し出し、回収してから、彼が待つというヒーリンへ急いだ。
最終更新:2007年12月13日 06:54