「言ってくれればいいのに…」
不安げなマリンの視線を受け止めながら、ティファは切なげにそれだけ言う。
これについても、なんとなく察しはついていた。
言ってさえくれれば、私やマリンが支えられたのに。
なのに、クラウドは独りで重病を患った体を引きずって出ていってしまった…
「病気だから、出ていったの?」
そう訊いてくるマリンの声は、どうしようもなく悲しそうだった。
「ひとりで、戦う気なんだよ…」
「戦う?」「違う」
ティファは曖昧な答えをマリンに返したが、すぐに訂正する。
あることに思い至ったからだ。
「戦う気なんか無いんだ…」
彼は戦っているのではない。逃げているのだ。
「…ティファ?」
ふとティファが我に返ると、マリンが心配そうに見ていた。
そんな彼女に、ティファは無理に明るい笑顔を作り、言った。
「マリン、帰ろう?」
「やだ!クラウドに会いたい!」
しかし、少女は拗ねるように言った。
そう、マリンもまた、ティファやデンゼルと同じように、押しつぶされそうな毎日に耐えているのだ。
ティファはそれをまた切なく思って、「そうだよね…」と頭を垂れた。
「…会いたいよね?」「うん」
帰ってきたのは、どこまでも素直な声。
「ね、会ったらどうしようか?」
私が弱気じゃいけない。そう思ったティファは、また笑顔を作って、明るい話題を振った。
「一緒に帰る!」「その前に」
ティファはいたずらっぽく微笑んだ。
「お説教だね」
「賛成!」
マリンの朗らかな声が、辺りに響いた。
最終更新:2007年12月13日 07:00