入ってきたのは大柄な男だった。
銀の髪を角刈りにし、左腕になにやら危険そうな武器を装備している。
ドスン、ドスンと大袈裟な足音を響かせながらやってくる男に対し、
ティファとマリンは、寄り添うようにして後退した。
しばらくして、男は膝を折り、視線の高さをマリンと同じにしてから、言った。
「遊ぼうか」
マリンは怖がるような目つきを男に投げつけた。
「…そうか、嫌か」
残念そうに呟くと、今度は「母さんは?」と訊いてきた。
ティファには男が何を言っているのか全くわからない。当然といえば当然だ。
一方で男の方は、足下に広がる花畑をなにやら厭そうな目つきで見ていた。
何だろうかと訝っていると、やがて「くせぇ!」と吐き捨てるように言い放った。
それからティファ達に向き直り、もう一度訊いた。
「なあ、母さんは?」
「誰もいないわよ!」
今度はティファが即座に言い返す。
すると男はなぜか泣きそうな顔をした後で、「じゃあ、遊ぼう」と、今度はティファに向かって言ってきた。
…どうも話が通じる相手ではないらしい。それに、何やら危険だ。
そう感じたティファは、マリンに何処かへ隠れているよう耳打ちし。
ハーフパンツのポケットから、黒いレザーグローブを取り出して填めると、ファイティングポーズを取った。
バーに強盗や盗人が現れた時は、ティファはいつもこうする。
「こりゃあ楽しみだ」
それを見た銀髪の男、ロッズも、格闘の構えに入る。
ティファは深く息を吸った。
一瞬の沈黙。静寂。そして、戦いの火蓋は唐突に切って落とされた。
最終更新:2007年12月13日 07:03