二節 砂塵4


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目覚めた少女は、瞬きを繰り返しながら、ベッドの上で体を起こした。状況が把握できないのだろう、不思議そうにあたりを見回している。
いかにも夢から覚めたばかりといった様子だったが、目の前のセシルに気付いた途端、表情が硬くなった。体を縮こめ、少しでも距離を取ろうとする。
「気がついたね。気分は?
 そういえば、まだ名前を聞いてなかったな」
「…………」
返答の代わりに、少女は手元のシーツを握りしめた。これぐらいは覚悟のうちだ。セシルは構わず話し掛けた。
「この薬を飲んでおくといい。熱病にかからなくなるそうだ。それと……」
明日君の世話をしてくれる所を探す、もう顔は見せないから、一晩だけ我慢して欲しい。そう続けるつもりだった。
「……君のお母さんは、僕が殺したも同然……許してくれるわけはない……」
少女の、怒りと怯えと諦めが混じりあった眼差しに、用意していた言葉が全て、こぼれ落ちて行く。
罪の深さを、その自覚を、いま少女に示してどうなるというのだろう。
ミストでカインと交わした誓いを、セシルは忘れていなかった。バロンに起こっている異変の正体を突き止め、かつての
彼女に償うためだけに、生きる覚悟もないくせに。
「ただ、できるだけのことをさせてくれないか……」
少女は何も言わなかった。まるでセシルの言葉が聞こえないか、聞いても理解できないかのように、じっと彼の顔を見つめ続ける。セシルは息を殺して、裁きを待った。
荒々しい物音が、沈黙を破る直前。確かに少女は、何かを言おうとしていた。
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