魔晄都市ミッドガル。
かつて人類が手にした栄華のシンボルにして、いまの人類の惨状を象徴する瓦礫の山。
その瓦礫の山に寄りそうようにして、復興都市エッジは建設されていた。
2年前にミッドガルが崩壊したとき、しぶとくも生き延びた人間たちの一部はどこかへ移住していった。
だがその他の大多数は、この地に新たな都市を築くことを選んだ。
瓦礫の中から使えそうな廃材をわざわざ選び出し、粗末な鉄骨を痩せた地面に突き立てて。
新しい街を作り上げるならもっと別な新天地があっただろうに、彼らはこの花一輪咲きそうにない荒野を選んだのだ。
なぜって?
決まっている。そこに居たかったからだ。
この土地で、ミッドガルの傍らで生き続けたかったからだ。
いまは廃墟でしかないその成れの果てに、かつての繁栄の名残を見続けたかったからだ。
…くだらない。
どこまでも浅はかで、弱い奴ら。
こんな虫ケラみたいな奴らに母さんがとられたと思うだけで、ヤズーは腹の底が煮えくり返るのだった。
ヤズーとロッズは、復興都市エッジの中央広場にいた。
その広場のさらに中央、ふたりの背後には巨大なモニュメントがある。
瓦礫を積み上げて造った思しき太い柱の上に巨大な円盤、さらにその円盤を支える何本もの細いワイヤー…見るからに不恰好だ。
神羅の社長によれば、それは記念碑というもので、なんでも復興の象徴として建立されるものなのだそうだ。
眼前には数百もの人間が群れていた。どれも憤怒の形相で、口々に罵り声を上げている。
やめろ、やめろと。訴える声は悲痛ですらあった。
こんな汚いガラクタ一つに、なにをそこまで騒ぐのやら。ヤズーは群集の罵声には応えず、背後に立つ記念碑を見上げた。
記念碑はすでに半壊していた。
最終更新:2007年12月13日 07:38