だが人間たちはヤズーとロッズに罵声を浴びせるだけで、それ以上のことはできない。
記念碑の周囲をぐるりと、子供たち―――ほとんどが身寄りのない孤児だ―――が囲っているからだ。
子供たちは手に手にマテリアを持ち、ヤズー達に近づこうとする人間を魔法で威嚇し、まるで壁のように立ちはだかっている。
カダージュから思念を分け与えられ、常人離れした体力と魔力を得ているのだ。
とはいえ、それは本当のリユニオンが始まるまでの、ただの間に合わせ。
一時的なものだし、強いショックを受ければ洗脳もすぐに解けてしまう。
それにこの人数差と体格差。大人がひとかたまりになってその気になれば、簡単に突破されてしまうはずだ。
にもかかわらず、こいつらはそうしない。ただ口々に声を上げるだけだ。
時々子供たちの威嚇に怯まず向かってくるやつがいるが、その数はあまりに少ない。
たった一人で群集から飛び出してきては、子供たちの魔法にあっさりと吹っ飛ばされるのが関の山だった。
本当にひ弱な奴らだ。ヤズーはそんな人間たちを鼻先で笑い、すでに半壊している記念碑に光る腕を向けた。群集から上がる声が、一段と大きくなる。
その声の中の一つが、はっきりと耳に入ってきた。
「子供たちを返せ!!」
ヤズーははたと動きを止め、声のしたほうを振り返った。
声の主は中年くらいの男だった。周りの人間に抑えられ、両腕を振り回してバタバタと暴れている。
「この子たちに何をしたの!?」
別の方向からも聞こえる。今度は女の声。
群集の半分は、記念碑の破壊に抗議しているのではなく、子供たちが操られていることに怒りの声を上げているのだった。
それに気づいたヤズーは、神経がピリピリと逆立つのを感じた。
―――こいつら、何言ってるんだ?
最終更新:2007年12月13日 07:39